2030年度から情報・技術科(仮称)に変わりますが、それまで動かすのはこの学習指導要領です。 そして次期改訂は、この現行版のどこが足りないと言われたかから出発しています。骨格を押さえておくと、改訂の意味も読み解きやすくなります。
その技術がどんな原理・法則に支えられ、どんな仕組みで成り立っているかを理解する。あわせて、技術に込められた問題解決の工夫を考える。
生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、設計・計画に表現し、製作・制作・育成して、実践を評価・改善する。
その技術が生活や社会、環境に果たす役割と影響を理解し、これからの在り方を考える。技術を選択・管理運用・改良・応用する視点を持つ。
授業づくりで迷ったときに立ち返る場所です。文言はそのまま引いています。
技術の見方・考え方を働かせ、ものづくりなどの技術に関する実践的・体験的な活動を通して、技術によってよりよい生活や持続可能な社会を構築する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
生活や社会で利用されている材料、加工、生物育成、エネルギー変換及び情報の技術についての基礎的な理解を図るとともに、それらに係る技能を身に付け、技術と生活や社会、環境との関わりについて理解を深める。
生活や社会の中から技術に関わる問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、製作図等に表現し、試作等を通じて具体化し、実践を評価・改善するなど、課題を解決する力を養う。
よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする実践的な態度を養う。
生活や社会における事象を、技術との関わりの視点で捉え、社会からの要求、安全性、環境負荷や経済性などに着目して技術を最適化すること。
平成29年の改訂では、①技術の発達を主体的に支え、②技術革新を牽引できるよう、技術を評価し、適切に選択、管理・運用したり、新たな発想に基づいて改良、応用したりすることによって、よりよい生活や持続可能な社会を構築する資質・能力の育成が、より一層重視されました。
プログラミングについては、従前の「計測・制御」に加えて「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」が新たに位置付けられた点が大きな変更です(従前の「情報に関する技術を利用した製作品の設計と製作」から変更)。
① 各領域の(1)「生活や社会を支える技術」の項目は、小学校での学習を踏まえた中学校でのガイダンス的な内容としても指導する。
② 第3学年で取り上げる内容の「技術による問題の解決」の項目では、他の内容の技術も含めた統合的な問題を取り扱う。── この②が、次期改訂で新設される「技術の統合」の原型にあたります。
見出しをタップすると、各項目とア・イの指導事項が開きます。ア=知識及び技能、イ=思考力・判断力・表現力等に対応します。
A・B・Cは (1)仕組み →(2)問題解決 →(3)俯瞰 の3項目、Dだけが問題解決を2つ持つ4項目構成。そして(3)や(4)の「社会の発展と◯◯の技術」の指導事項は、A〜Dでほぼ同じ文言です。領域が違っても、育てる力は同じ形をしているということです。
実務でいちばん確認したくなるところをまとめます。
| 評価の観点 | 技術分野で見るもの |
|---|---|
| 知識・技能 | 技術の原理・法則と仕組みの理解、生活や社会・環境との関わりの理解、製作・育成・制作に必要な技能 |
| 思考・判断・表現 | 問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想して設計・計画に表現し、実践を評価・改善する力。技術を評価し、選択・管理運用・改良・応用の在り方を考える力 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、適切かつ誠実に技術を工夫し創造しようとする実践的な態度 |
| 学年 | 技術・家庭科の標準授業時数 | 備考 |
|---|---|---|
| 第1学年 | 70コマ(週2) | 技術分野と家庭分野に配当。配分は各学校の指導計画によりますが、3年間の合計175コマを両分野で分け合う形が基本です。 |
| 第2学年 | 70コマ(週2) | |
| 第3学年 | 35コマ(週1) |
技術・家庭科が分離されるため、情報・技術科(仮称)単独で 1・2年に70コマ程度、3年に35コマ程度 という案が検討されています。実質的に、技術分野に使える時間が今のおよそ2倍になる計算です。ただし年間の標準総授業時数を増加させない方針が前提とされており、確定ではありません。
平成29年3月告示、令和3年度(2021年度)から中学校で全面実施。移行期間を経て、現在の生徒はすべてこの学習指導要領の下で学んでいます。次期は中学校で令和11年度(2029年度)から先行実施、令和13年度(2031年度)から全面実施の見込みです。
次期改訂の議論の中で、現行の技術分野についてかなり率直な指摘が出ています。批判というより、次に何をすべきかの手がかりとして読めます。
「技術の原理や仕組みを知り、その技術を使った問題解決を実践し、その技術を俯瞰・評価する」という技術の学習過程の考え方の定着が図られておらず、多くの生徒が技術の原体験にとどまり深い理解に至っていないと指摘されています。木材加工や栽培、電子工作といった体験にとどまり、生活の中での活用や課題解決に結び付けて考える学習が十分ではない、という言い方です。
A・B・Cの3領域の指導では、問題を見いだして課題を設定し、解決策を設計・計画する過程の指導が不十分な状況にある、と指摘されています。
A・B・Cの指導が、DX化の進む現代の製造や食料生産、エネルギー生産と供給等と乖離している状況がある、とされています。
デジタル技術の学習が「D情報の技術」に閉じており、内容も諸外国と比べて見劣りする。A・B・Cで3Dプリンタ、センシングデータ、シミュレータの活用など情報技術との関連が図られていない。また、コンピュータやネットワークの仕組みの理解やデータ活用が十分に扱われておらず、生成AI等の先端技術に関わる内容が明確に位置付けられていない。
指摘されている4つの課題は、次期改訂でそれぞれ手当てされています。①→学習過程を(ア)(イ)(ウ)と見出し化 ②→目標に「探究的に」を明記 ③→生産技術をデジタル前提に組み直し ④→情報技術を教科全体の基盤に。いま埋めておくほど、移行が楽になります。
現行の内容項目と、情報・技術科(仮称)の内容項目の対応です。消えるものはありません。
| 現行(技術分野) | 次期(情報・技術科・仮称) |
|---|---|
| A 材料と加工の技術 | 2-(1) 材料加工とデジタル製作 3DCAD・3Dプリンタ等のデジタル加工機、人間工学に基づく設計が加わる |
| B 生物育成の技術 | 2-(2) 生物育成とデータ活用 環境データの計測・分析、AIを利用したスマート農林水産が加わる |
| C エネルギー変換の技術 | 2-(3) エネルギー変換とスマート化 シミュレータを用いた設計、AI・センサを使ったロボティクス、蓄電技術が加わる |
| D(1) 生活や社会を支える情報の技術 D(4) 社会の発展と情報の技術 | 1-(1) 情報の表現とデジタル化 / 1-(3) 情報基盤とシステム化 メディアリテラシー、フィルターバブル、データ活用、AIの仕組みが大幅に加わる |
| D(2) 双方向性のあるコンテンツのプログラミング D(3) 計測・制御のプログラミング | 1-(2) プログラミングと自動化 2つが1つに統合され、AIによる自動化、アジャイルな制作、フィジカルAIが加わる |
| 第3学年の統合的な問題の取扱い (内容の取扱いに規定) | 2-(4) 技術の統合 独立した内容項目として制度に位置付けられる |
現行ではA・B・C・Dが横並びの4領域でした。次期では、情報技術が生産技術を下から支える基盤という縦の関係になります。「情報技術を4分の1として教える」から「情報技術の上で、材料・生物・エネルギーを教える」への転換です。
もう一つは学習過程の明示化です。現行でも(1)(2)(3)は学習過程に対応していますが、見出しからは読み取りにくく、A〜Dに共通する考え方が十分に表現されていないと指摘されました。次期では全内容項目で(ア)技術の原理と仕組み/(イ)技術による問題解決/(ウ)社会における技術の吟味と活用と見出し化されます。現行の枠内でも、今日から単元計画の柱をこの3つに揃えることができます。
現行の骨格は、免許外で担当している先生に説明する場面でも効いてきます。5問・10問・20問・全問から選べます。連続正解でコンボが出ます。間違えた問題だけをもう一周できます。
目標・学習過程・評価・D領域について、現場で見落とされやすいポイントを確認します。
目標、学習過程、内容構成、評価、時数、そして指摘されている課題まで。