学習指導要領のしくみ / 現行と次期

「見方・考え方」って結局なに?資質・能力の三つの柱、主体的・対話的で深い学び、そして次期の目玉「高次の資質・能力」。

学習指導要領の用語は、意味が分かると急に授業づくりの道具になります。ここでは現行(平成29年告示)の骨格を押さえたうえで、 次期改訂で何がどう変わるのかを整理します。次期の中心にあるのは「高次の資質・能力」という新しい概念です。 各節に30問ずつの問題バンクを置いてあります。ランダム5問/10問/20問/全問から出題数を選べ、間違えた問題だけをもう一周できるようにしてあるので、研修や自習にどうぞ。

次期の方向性 1

主体的・対話的で深い学びの実装

Excellence。現行が目指してきた授業改善について、一層の具現化・深化を図る。第一の方向性と位置付けられている。

次期の方向性 2

多様性の包摂

Equity。子供たちの多様性を包摂することで、一人一人の意欲が高まり、可能性が開花し、個性が輝く教育を実現する。

次期の方向性 3

実現可能性の確保

Feasibility。持続可能な在り方を追求し、教師と子供の双方に「余白」を創出することで豊かな学びにつなげる。

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先にクイズで腕試し45問の問題バンク。5問・10問・20問・全問から選べます。読むより先に、まず解いてみるのがおすすめです。

資質・能力の三つの柱

平成29年改訂で、すべての教科等の目標と内容がこの三つの柱で書き直されました。「何を知っているか」だけでなく「知っていることを使ってどう社会と関わるか」への転換です。

知識及び技能

何を理解しているか、何ができるか。生きて働く知識・技能。個別の事実的知識だけでなく、それらが相互に関連付けられて概念として理解されている状態を目指します。

思考力、判断力、表現力等

理解していること・できることをどう使うか。未知の状況にも対応できる力。問題を発見し解決する過程で発揮され、磨かれます。

学びに向かう力、人間性等

どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか。他の二つの柱をどのような方向性で働かせるかを決定付ける重要な要素とされています。

三つの柱は、順番ではなく往還です

「ある程度の知識・技能なしに思考・判断・表現することは難しい。一方で、思考・判断・表現を伴う学習活動なしに、知識の深い理解と技能の確かな定着は難しい」── 次期改訂の資料はこう明記しています。知識を先に全部入れてから考えさせる、という順序ではなく、一体的に育成するという考え方です。

見方・考え方とは何か

技術分野の場合(現行)

生活や社会における事象を、技術との関わりの視点で捉え、社会からの要求、安全性、環境負荷や経済性などに着目して技術を最適化すること。

3つの部品でできている

どの教科の「見方・考え方」も、次の3つの部品で書かれています。分解すると読みやすくなります。

① その教科で扱う事象や対象(技術科なら「生活や社会における事象」)
② その教科固有の、物事を捉える視点(技術科なら「技術との関わり」)
③ その教科固有の、考え方や判断の仕方(技術科なら「要求・安全性・環境負荷・経済性に着目して最適化する」)

つまり見方・考え方とは、その教科ならではのものの見え方と考え方であり、その教科を学ぶ意義そのものです。授業で「見方・考え方を働かせる」とは、生徒がこの視点で世界を見られるようにする、ということです。

次期ではここが改善されます

現行では、学習指導要領の本体には「見方・考え方を働かせ〜」と書かれているだけで、それが何なのかは解説の方に書かれているという構造でした。次期では、見方・考え方をその教科の「意義」として本体でしっかり示す方向で検討が進んでいます。

確認クイズ ── 三つの柱と見方・考え方(全30問バンク)

主体的・対話的で深い学び

「アクティブ・ラーニング」という言い方から、この表現に落ち着いた経緯があります。大事なのは、これが授業改善の視点であって、特定の指導方法の名前ではないという点です。

主体的な学び

学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる学び。

対話的な学び

子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める学び。── 対話は人と人だけではありません。本や資料との対話も含みます。

深い学び

各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう学び。

三つのうち、いちばん難しいのが「深い」

主体的・対話的は活動の形として見えやすい一方、「深い学び」は見えにくく、形だけ活発で中身が深まらない授業になりやすいことが課題とされてきました。次期改訂で「高次の資質・能力」という概念が導入されたのは、まさにこの「深い学び」を授業で具現化しやすくするためです。次のタブがその話になります。

カリキュラム・マネジメントの3つの側面

側面内容
① 教科等横断教科等の枠を越えた視点で、教育の内容を組織的に配列する
② PDCA教育課程の実施状況を評価して改善を図っていく
③ 人的・物的資源地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせる

次期での扱い

カリキュラム・マネジメントについては、教師にとって意義を感じられる日常の取組となるよう考え方を整理することが検討事項に挙げられています。事務作業ではなく日常の実践として位置づけ直す方向です。

確認クイズ ── 深い学びとカリマネ(全30問バンク)

高次の資質・能力 ── 次期改訂の中心概念

次期改訂でいちばん新しい言葉です。ひとことで言えば、「個別の資質・能力が深まった先にある姿」を、学習指導要領にはっきり書き込むということです。

定義

「高次の資質・能力」は、個別の資質・能力が深まることで至る、「統合的な理解」や「総合的な発揮」を指し示すものであり、個別の資質・能力との関係で重要性の軽重を意味するものではない。

2つの柱が、それぞれ一段上がる

数学(関数)の例で見ると分かりやすくなります。
知識及び技能
個別の知識や技能
知識① 知識② 知識③ …
例:比例・反比例の理解/1次方程式の解き方
▲ 相互に関連付けられて一般化される
高次の資質・能力
知識及び技能に関する
統合的な理解
例:関数を使えば未知の状況を予測できる
── 生きて働く/他の学習や生活の場面でも活用できる
思考力、判断力、表現力等
個別の思考力、判断力、表現力等
個々の思考・判断・表現
例:二つの数量の変化・対応関係を見つけて式やグラフを用いて考察する
▲ 組み合わせたり選んだりして総合的に働かせる
高次の資質・能力
思考力、判断力、表現力等の
総合的な発揮
例:現実の事象を数式でモデル化し、未知の状況を予測して、具体的な解決策を選択する
── 未知の状況にも対応できる

統合的な理解とは

個別の知識や技能が相互に関連付けられて一般化され、統合的な理解となった姿。ばらばらの知識が「要するにこういうことだ」という一段上の理解にまとまった状態です。

総合的な発揮とは

複雑な課題の解決に向けて、個別の思考力、判断力、表現力等を組み合わせたり選んだりして総合的に働かせた姿。教わった手順をなぞるのではなく、未知の場面で自分で組み立てる状態です。

名前が途中で変わっています

論点整理(令和7年9月)の段階では「中核的な概念の深い理解」「複雑な課題の解決」と呼ばれていました。その後の総則・評価特別部会での議論を踏まえ、「知識及び技能に関する統合的な理解」「思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮」と改称され、この2つを総称して「高次の資質・能力」と呼ぶことになりました。資料によって呼び方が違うのはこのためです。

何のために導入されたのか

ねらいははっきり書かれています。「統合的な理解」と「総合的な発揮」を記述することにより、資質・能力の理解やその育成のための教師の単元構成や授業づくりを助け、「深い学び」を授業で具現化しやすくするため。

つまり、これまで「深い学び」と言われても具体像がつかみにくかったところに、学びが深まった生徒の姿を教科ごと・内容項目ごとに言葉で示す、ということです。

あわせて、学習指導要領そのものを構造化・表形式化・デジタル化し、日々の授業づくりで教師一人一人が使いやすいものにする方針が示されています。

誤解しやすい2点

① 個別の資質・能力が軽いという意味ではありません。資料は「重要性の軽重を意味するものではない」と明記し、さらに「個別の資質・能力が確実に育成されることが、統合的な理解や総合的な発揮を支える」と注記しています。基礎を飛ばして「高次」には行けません。
② 3つ目の柱には設定されません。高次の資質・能力は「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」の2つの柱について示されるもので、「学びに向かう力、人間性等」は別途、要素の再整理という形で扱われます。

技術科ではどう書かれているか

情報・技術科(仮称)では、内容項目ごとに「統合的な理解」と「総合的な発揮」が設定されています。たとえば「情報の表現とデジタル化」なら──

統合的な理解:情報技術により情報やデータから新たな関係や意味を見いだしたり、利用者の立場で情報を批判的に吟味・設計したりすることが、分析結果や考えの分かりやすい表現につながることを理解する。

総合的な発揮:情報技術の正負の側面に配慮しつつ、情報やデータの分析結果を判断し表現したり、利用者にとって分かりやすい情報を批判的に吟味・設計・表現し、評価・改善したりできる。

この書き方によって、単に技術に関わる知識を覚えたり実習で技能を磨いたりするにとどまらず、その技術活用の有する価値や可能性を理解できるような授業づくりを促すことがねらいとされています。

確認クイズ ── 高次の資質・能力(全30問バンク)

「学びに向かう力、人間性等」の再整理と、評価の変更

現行では要素が多岐にわたって列記され、全体像や関係性が分からないという課題がありました。次期では4つの要素に構造化されます。そしてこれが、評価の見直しに直結します。

① 初発の思考や行動を起こす力・好奇心

各教科等で育成された知識及び技能、思考力、判断力、表現力等を土台として、初発的な思考や行動を起こす力。創造性等と関連。

② 学びの主体的な調整

自分の思考や行動を客観的に把握し認識(メタ認知)しながら学習を自己調整し、思考や行動を修正したり次につなげたりする力。

③ 他者との対話や協働

教師の指導を含む他者からのフィードバック、書籍等との対話、多様な他者との協働・共感や対立の乗り越え等を通じて学びを支える態度。

④ 学びを方向付ける人間性

思考や行動を自身の豊かな人生やより良い社会に向けていく人間性。民主主義、共生社会、持続可能な社会、ウェルビーイング、エージェンシー等と関連。

4つは往還します

①「初発の思考や行動を起こす力」と、②「学びの主体的な調整」③「他者との対話や協働」との往還を通じ、粘り強く継続的に思考・行動する経験が繰り返されることで、「学びに向かう力、人間性等」が育まれる、という関係で整理されています。

観点別評価が変わります

 現行次期の方向性(案)
観点知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度 の3観点知識・技能/思考・判断・表現 の2観点を目標準拠評価
評定への総括3観点すべてを目標準拠評価し、評定(小3段階、中高5段階)に総括上記2観点を評定に総括
学びに向かう力「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(A・B・C)個人内評価とし、評定せず、総合所見欄等に反映
新しい仕組み─思考・判断・表現の過程で「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」「学びの主体的な調整」「他者との対話や協働」が特に表出した場合、「思・判・表」の観点別評価に「◯」を付記

いちばん誤解されやすいところ

資料は釘を刺しています。この見直しは「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力が一層重要となることを踏まえ、その効果的な育成を図るために、特質に応じた評価の在り方に改善を図るものであり、「評価をしなくてもよくなる」「軽視してよい」といった誤った理解とならないよう、具体的な運用の設計と趣旨の周知・徹底を図る必要がある、と。

なお、「◯」を評定に一定程度加味することの適否は、引き続き総則・評価特別部会で検討するとされており、確定していません。

確認クイズ ── 学びに向かう力と評価(全30問バンク)

「余白」の創出と、柔軟な教育課程

3つ目の方向性であるFeasibility(実現可能性の確保)の中身です。新しい教科をつくる以上、どこかを緩めなければ回りません。

なぜ標準授業時数が超過するのか

資料は2つの懸念を挙げています。① 教科書を網羅的に教えなければならないという根強い認識、② 不測の事態等があっても標準を下回らないようにしなければならないという考え。この2つから、中学校の年間の標準総授業時数1015単位時間に対し、実際には1086単位時間規模まで超過が生じている実態が示されています。

4つの手を同時に打つ

手立て内容
① 学習指導要領の構造化高次の資質・能力をもとに重点化し、必要に応じて内容を精選する
② 標準授業時数の弾力化各教科の標準を下回る時数で指導できるようにし、生まれた分を「調整授業時数」として使えるようにする
③ 教科書の重点化・精選教科書「を」教えるから、教科書「で」教えるへ。分量を絞り、多様な教材活用を前提にする
④ 入試の改善網羅主義を脱するには高校入試の改善が必要、と明記されている

調整授業時数の使い道

各教科の標準を下回って生み出した時数は、次のように使えるようにする方向です。
・他の教科等に上乗せする
・「裁量的な時間」に充てる ── 基本的な概念の獲得や意味理解を伴った確かな知識の習得、認知の特性に応じた学力保障、学習方略に関する指導、個人探究を伴う体験活動、ソーシャルスキルトレーニング等
・特に必要な教科の開設に充てる
・「裁量的な時間」の一部を、授業や指導の改善に直結する組織的な研究・研修等に充てる

柔軟な教育課程は「2階建て」

1階:学校共通の教育課程

すべての児童生徒が学ぶ共通の部分。ここ自体を柔軟化する(標準時数の弾力化、裁量的な時間)。

2階:個々の児童生徒に着目した教育課程

特例を設ける対象として、日本語指導が必要な児童生徒/校内外の教育支援センター等に通う不登校児童生徒/通級による指導が必要な児童生徒(以上は拡充)、特定分野に特異な才能のある児童生徒/学齢超過者(以上は新設)が挙げられています。

スケジュール

令和7年9月教育課程企画特別部会「論点整理」+パブリックコメント
令和7年秋〜令和8年夏総則・評価特別部会や各ワーキンググループで方向性や内容を検討
令和8年夏頃各WGの取りまとめ+パブリックコメント
令和8年度中中央教育審議会が答申
その後学習指導要領の改訂告示 → 先行実施(小2028〜/中2029〜)→ 全面実施(小2030/中2031/高2032入学生〜)
確認クイズ ── 余白と柔軟な教育課程(全30問バンク)

総まとめテスト

5つの節のバンクをすべて合わせた全150問。ランダム5問/10問/20問/全150問から選べます。腰を据えるなら全問、すきま時間なら5問、という使い分けができます。

総まとめテスト(全150問バンク)